新しい香港を探しに…(4)

◎これが香港の新しい味???

「新しい広東料理」でまず頭に浮かぶのは、30年ほど前の「ヌーベルシノワ」の流行。丸ごとのマンゴーをくり抜いてフカヒレスープを注ぎ入れたり、イタリアンパスタのバーミセリをグラタンにしたりなど、奇想の料理が香港の街のあちらこちらで日夜誕生していました。

しかし今回訪れた「チャイナ・タン」と「Mott 32」の新しい料理は、違った。
奇をてらったアレンジ料理は、メニューに見当たりません。料理名を見る限り、一品一品はきわめて真っ当です。では今までの香港の料理と何が違うのか。それは、広東料理以外の中国料理、たとえば四川料理、上海料理をどんどんメニューに取り入れていることです。

実際にいくつか注文して食べてみましたが、香港人の口に合うようにアレンジされた「なんちゃって四川」「なんちゃって上海」じゃない、本場の味、本物の香りがする料理ばかりでした。 四川料理では「口水鶏(よだれ鶏)」「“虫馬”蟻上樹(麻婆春雨)」「蒜泥白肉(ゆで豚のにんにくだれ)」。小さなアレンジ、たとえば春雨にトウモロコシが加えてあったりはしたものの、料理の骨格そのものは四川正宗であります。

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上に偽キャビ(ランプフィッシュキャビア)が乗ったアレンジが可笑しい「小龍包」も、上海の街場の店レベル以上の美味しさがあります。

一方、パリパリの皮で食べ手を魅了する「鶏や鳩のロースト」や、特製釜を有する「Mott 32」の「烤乳猪(子豚の丸焼き)」は、見事な焼き具合。これぞ香港の焼き物!といえましょう。

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つまり新しい香港料理は、「広東料理一色ではない」ということなのです。

香港はいまや、中国本土から大勢の人間を集める集客装置。家族連れの富裕層やバブリーなビジネスマンが各地からこの街に集まってきています。そんな人々を魅了するには、広東ローカル一辺倒ではだめなのでしょう。広大な中国の、各地の味を集めて香港の料理の粋を注ぎ込んだ、これが「新しい香港料理」なのではなかろうかと結論しました。

「中国の味のコスモポリタン」になりつつある香港。各地の料理がどんな風に洗練されてテーブルに運ばれるか、興味をもって見るのが、今時の香港レストランの楽しみ方のようです。

(余談)
四川の名菜「麻婆豆腐」。以前香港で食べられていたのは、四川料理とはほど遠い味付けでした。唐辛子を控え、花椒は使わず、ケチャップ味に仕上げる、といった具合。香港人はこれを「麻婆豆腐」といい、満足していました。
その昔、東京赤坂の四川飯店の創業者・陳健民さんの作る麻婆豆腐は、日本人の口に合わせた味で人気を博したといいます。しかし陳さんが香港で料理人として働いた後に日本に来たことを考えると、「日本人の口に合わせた」のではなく、「香港の味を日本に持ってきた」という言い方が正しいようにも思います。

2015-03-06 | Posted in コラムComments Closed 

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